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2007年02月16日
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エヴァパト 1st STAGE 『シシャの影、セイジャの愛』 前編

ブックマーク: Buzzurl  / Hatena  / Livedoor /Yahoo!  
  • 編集元:エヴァ板より「エヴァもいいけどパトレイバーも面白いよ

    5 名無しが氏んでも代わりはいるもの :2006/12/26(火) 13:42:05 ID:???
    エヴァとパトのクロスオーバーモノって
    パトエイヴァーしかないのかな?
    まあ、パトエイヴァー自体読んだことないんですけどね

    55 21 ◆PymYnrJRCY :2007/01/20(土) 14:10:35 ID:???
    ミサト「例の怪物の件、聞いた?」
    リツコ「ええ、聞いたわ。それが使徒であるのか、または別の何かであるのか
        今の段階では情報が少なすぎて判断が出来ないわ」
    ミサト「マギの回答は?」
    リツコ「50%50よ」
    ミサト「そう・・・」
    リツコ「とりあえず私はこれから警察の方に行くから後はよろしく
        何かあったらマヤに言って頂戴」
    ミサト「なんでも良いから使えそうなデータ貰ってきてね」

    特車二課第二小隊の面々は、昨日の怪物騒ぎの中撮られた映像を検証していた

    後藤 「つまり・・・なんなんだこれは?」
    泉  「なんだと言われましても・・・」
    篠原 「見ての通りなんだかわからないものでして・・・」

    だが、映像には一応怪物の姿は映ってはいるのだが
    輪郭がぼやけており姿がハッキリとせず、結局わからないままである

    56 21 ◆PymYnrJRCY :2007/01/20(土) 14:12:20 ID:???
    南雲 「後藤さん、ネルフの人がお見えになったわよ」
    リツコ「ネルフ技術一課主任の赤木です」
    後藤 「おおこれはこれは、いやわざわざこんな場末までご苦労様です
        私が第二小隊隊長の後藤です。以後お見知りおきを」
    一同 (場末って・・・)
    リツコ「よろしく」
    後藤 「で、早速ですがこの映像を見てもらえますか」

    先ほどの映像を、今度はリツコが見る

    後藤 「どうでしょう、コイツはやっぱり使徒なんでしょうかね?」
    リツコ「・・・これだけでは何とも言えませんね。他の記録はありませんか?」

    この映像では、さすがにリツコでも判断ができなかった

    後藤 「残念ながらコレだけなんですよねぇ・・・
        進士、山崎、今見た記録のコピーとったら、一まとめにして科研に送れるようにしといてくれ
        申し訳ありませんがそちらにお渡しするデータはコピーでもよろしいですか?」
    リツコ「ええ、構いませんわ」

    57 21 ◆PymYnrJRCY :2007/01/20(土) 14:14:39 ID:???
    ミサト「・・・で、それがこの映像ね・・・・・・なによコレ、全然分かんないわよ
        何だかワケの分かんない生物ではあるみたいだけど・・・」
    リツコ「でもそれだけで使徒と断定することは出来ないわ。マギも同意権よ
        サーモグラフの情報と実像を重ねてみようとも思ったんだけど
        両方同時に録っている場面がなくてね」
    ミサト「一コマも?」
    リツコ「一コマもよ」
    ミサト「ウチの施設壊す、映像もまともに撮れない・・・何やってんのかしらね警察は」
    リツコ「そうは言うけどね、ミサト・・・?
        もしこれが使徒だったとしたら・・・そう考えてしまったら
        いくら警官とはいえ、冷静ではいられなくなるんじゃないかしら?
        レイバーに乗っているとは言っても、生身なんだし」
    ミサト「まぁ、そりゃそうかもしんないけどさぁ・・・。で、これからど〜しよ〜・・・」
    リツコ「とりあえずこの映像、出来る限りの修正を加えてみるけど
        あまり期待はしないでおいた方がいいと思うわ」
    ミサト「ええ、わかったわ。・・・それにしても・・・」
    リツコ「まだ何かあるの?」
    ミサト「特車二課なんだけどさ、せめて考えもなしにバンバンぶっ放すのだけは
        やめてもらいたいもんだわ・・・」
    リツコ「私もそれはフォロー出来ないわね」

    58 21 ◆PymYnrJRCY :2007/01/20(土) 14:16:22 ID:???
    太田「・・・ブヘックショーイ!あーチクショウ・・・」
    泉 「うわ!」
    後藤「なんだー、太田、風邪か?」
    太田「いえ、多分誰かが噂でもしていたんでしょう」
    篠原「だったら多分悪い噂だな」
    太田「なんでだ!」
    進士「あー・・・」
    山崎「でしょうねぇ・・・」
    太田「お前らなぁぁあ!」
    後藤「俺もそう思うなぁ〜」
    太田「た、隊長!!」
    熊耳「ところで報告書はどうすれば?」
    後藤「あー、そういやまだ出てなかったな」
    篠原「何て書いたらいいんです?」
    後藤「熊耳と一緒に相談しながら適当に書いちゃって
       ・・・にしても使徒だとしたら厄介だなぁ・・・」
    篠原「具体的にどう厄介なんです?」
    後藤「戦自ほどじゃないにせよ、警察とネルフってあんまし仲が良くないんだよねぇ」
    泉 「戦時ほどって・・・戦自とネルフってそんなに仲が悪いんですか?」
    後藤「悪いよ。ついでに言えば警察と戦自もそんなに仲良くないし」
    太田「このご時世において上層部同士がいがみ合っているとは・・・情けない」
    篠原「たまには良いことも言うんだな」
    太田「『たまには』は余計だ!」

    60 ◆PymYnrJRCY :2007/01/22(月) 11:18:40 ID:???
    壊れた家、倒れた電柱、垂れ下がった電線、崩れたビル、ヒビの入った道路、落ちた信号機・・・
    それらはかつてそこに人々が生活していたということを主張している
    だがそれも人の目に付かなければ気づく者も少ないであろう
    ただ、かつてのその時代を知っている者ならば、そこが栄えていたということは
    常識と言ってもよいことでもあり、むしろ悲劇を思い出させるこの町並みなど
    見えないほうがむしろよいことであるのかもしれない・・・
    今この町が触れるは空気ではなく、海水。ここは海の底、旧東京都
    過去の地図と現在の地図を見比べてみればすぐわかることなのであるが
    『セカンド・インパクト』の影響で海面が上昇し、東京湾沿岸は過去のそれより内陸に食い込んでいる
    日本臨時政府は東京中心部の復興を断念、放置区画として封地したが
    非水没地は旧東京市として行政区画され、市町村がそのまま区となった
    海面上昇によって水没した地域はその後かなりの部分が埋立工事により再度陸地となり
    そのため断念されていた復興計画が動き始める
    大規模再開発計画、『バビロン・プロジェクト』の開始に伴い、かつての都に人々が戻り始めた
    だが、人が集まればその分トラブルも増えることは当然のことであり
    再開発地区である以上は、多足歩行式大型マニピュレーター「レイバー」の数も当然増えることとなる
    それはレイバー犯罪と呼ばれる、新たな社会的脅威をもまきおこした
    続発するレイバー犯罪に対抗すべく、警視庁は本庁警備部内に特殊機械化部隊を創設した
    通称「パトロール・レイバー中隊」、パトレイバーの誕生である

    後藤「とまぁ、これがこのお話の基本設定ってとこ」
    南雲「・・・誰に向かってしゃっべているのよ?」

  • 68 ◆PymYnrJRCY :2007/01/25(木) 12:30:56 ID:???
    EVAPAT-エヴァパト- 1st STAGE 『シシャの影、セイジャの愛』

    このご時世、ネルフの作戦部長であるミサトが忙しいのは当前のことである
    であるのに、先日の怪物騒ぎだ。ミサトはなかなか家に帰ることができない
    そのため、葛城邸には加持が泊まりに来ていた。保護者代理である

    アスカ「あ〜あ、シンジがいなけりゃ加持さんと二人っきりになれるのに〜」
    シンジ「・・・じゃあ誰が晩御飯作るのさ」
    アスカ「外に食べに行けばいいじゃん!」
    加持 「それは俺に飯を奢れってことか・・・?」
    アスカ「あ、そうじゃなくて・・・」

    テレビは点きっぱなしになっている
    画面の中では、くだらない芸人がくだらないことを言って笑いをとっている

    アスカ「・・・何で日本人はこんなので笑えるのかしら」
    シンジ「僕もこれは笑えないけどね・・・」
    加持 「ま、そんなもんさ・・・・・・ん?何かあったのか?」

    画面の上部に、ニュース速報の文字が映し出された
    内容は、昨晩旧東京で起きた事故についてであった

    シンジ「・・・バビロン工区でテロ?」
    アスカ「まただったの?4〜5日前あたりにもあったわよね
        ・・・そういやアンタたしか、前は旧東京にいたんでしょ?」
    シンジ「うん。あの頃はこんな事なかったのに・・・」
    加持 「・・・・・・・・・」

    チルドレン達は、まだ怪物のことは聞かされてはいない

    69 ◆PymYnrJRCY :2007/01/25(木) 12:31:51 ID:???
    同時刻、特車二課

    泉 「南雲さん、どうしてあんな嘘を言うんですか?」
    南雲「嘘?」
    篠原「警察発表のことですよ」

    先日の怪物騒ぎは、テロだったとして発表されていた

    南雲「じゃあ、なんて発表するの?」
    泉 「えーと・・・」
    篠原「あれはテロリストなんかじゃありません!怪獣です!」
    泉 「そうです!それに昨晩のだって、テロじゃなくて怪獣かも・・・」
    南雲「・・・そんなこと発表できると思うの?」
    篠原「もしかしたら使徒かもしれないんですよ?」
    南雲「だとしたら余計に発表できないじゃない」

    使徒もエヴァも事実は公表されていない。そもそもネルフ自体、非公開組織である
    セカンドインパクトについても、公表されている情報は事実とは異なる

    南雲「事実を公表したら、世界中で大混乱が起きるわ
       さ、納得したら持ち場に戻りなさい」
    泉 「でも・・・」
    南雲「さっさと戻りなさい」
    後藤「・・・あんまり僕の部下をいじめないでほしいなぁ」

    外出していた後藤が戻ってきた

    南雲「いじめてなんか・・・アラ、そこの二人は・・・」
    後藤「ああ、泉と篠原にお客さん」

    73 ◆PymYnrJRCY :2007/01/26(金) 19:14:29 ID:???
    ギラギラとした太陽の光が道路を焦がす

    久住「・・・クソ、暑いな」
    秦 「もともと今の時期は、セカンドインパクトの前でも夏ですよ」
    久住「そんな問題じゃない。だいたいな、年中夏なんだぞ
       その上で今はもともとの夏の時期なんだよ」
    秦 「だからいつも以上に暑いってことですか?
       変わらないと思いますけどねぇ・・・」
    久住「気持ちの問題だよ」
    秦 「なんですか、それ・・・」

    二人は公園の近くを通りかかった
    とりあえず休憩することにしたらしい
    二人は自販機で缶コーヒーを買うと、公園の中に入っていき
    適当なベンチに腰をかけた

    秦 「久住さん、あの二人が見たのってやっぱり・・・」
    久住「・・・ああ、俺達が見たヤツと同じだろうな」
    秦 「でしょうね」
    久住「もし違ったら大変だぞ」
    秦 「何でですか?」
    久住「あんなのが何匹もいてみろ」
    秦 「・・・大変なんてモンじゃないですね」

    二人は特車二課でのことを思い出していた

    74 ◆PymYnrJRCY :2007/01/26(金) 19:15:21 ID:???
    後藤「たまには遊びにきてよ」
    久住「若いのががちゃがちゃやってる所は苦手でね
       どうだ、修学旅行の引率にはもう慣れたか」
    後藤「よくできた生徒が多くてね。一日の半分は昼寝させてもらってますよ」
    久住「そうかい、そいつは羨ましいな。で、そのよくできた生徒二人が見たのは・・・」
    後藤「ま、それは本人達に直接聞いてよ」

    後藤は隊長室のドアを開けると、中へと入っていった

    秦 「剃刀後藤・・・でしたっけ・・・?」
    久住「ん?ああ、昔ちょっとな。今は昼行灯で通ってはいるが・・・」
    後藤「ごめんね、昼行灯で」
    秦 「あ・・・」

    開いたドアの隙間から、後藤が頭だけを出していた

    秦 「すみません」
    後藤「あ、いや、君が謝ることはないんだよ」
    久住「ああ、謝らんでいい」
    後藤「・・・・・・まぁ、とにかく入って」

    後藤に促され、二人は中に入った

    南雲「いじめてなんか・・・アラ、そこの二人は・・・」
    後藤「ああ、泉と篠原にお客さん」
    泉 「私達にですか?」
    後藤「うん。城南署の久住刑事と秦刑事」

    75 ◆PymYnrJRCY :2007/01/26(金) 19:17:49 ID:???
    篠原「で、お話というのは・・・」
    秦 「先日のバビロン工区でのテロ、実は居合わせたんですよ」
    泉 「・・・お二人がですか?」
    篠原「・・・もしかして、見たんですか?」
    秦 「まぁ、そうなんです・・・」

    静まり返る室内

    久住「・・・それで君達が見たモノと、我々が見たモノが同じモノなのかと・・・」
    秦 「とりあえず特徴みたいなのって分かりますかね・・・?」

    泉と篠原は、大まかな印象を久住、秦に説明した
    何分じっくりと観察したわけではないので、どうも細かいところが分からないが
    爬虫類と魚類をあわせた様な怪物、ということのようである

    久住「発砲は?」
    泉 「その、もし使徒だったらって思うとなかなか出来ませんで・・・」
    久住「・・・なるほど、たしかに」
    篠原「撮影した映像も不鮮明でしたし、証拠がないんですよね・・・」
    秦 「ああ、それなら肉片が見つかったんで科研にまわしましたよ」
    泉 「え、そうなんですか?」
    篠原「じゃあ、証拠があるんじゃないですか。なんで対策をとれないんですか?」
    久住「・・・『刑事二人の目撃証言だけで、都レベルの対策なんて上申できるか』・・・だそうだ」
    秦 「一応は四人に増えましたけどね・・・」
    篠原「とにかく、臨海部への立ち入りは規制すべきでしょう
       このままじゃ犠牲者が増えるばかりですよ」
    秦 「・・・久住さんと同じこと言うんですね」
    久住「・・・アレを見たら誰でもそう思うってことだな」

    80 硝蛇楼 ◆PymYnrJRCY :2007/01/27(土) 01:27:06 ID:???
    後藤「あら、もう帰っちゃうの?」
    久住「用も済んだんでな」
    後藤「また遊びにきてね」
    久住「仕事できたんだぞ、俺達は」

    カンッ・・・

    二人はベンチから立ち上がると、空き缶をゴミ箱へ捨てた

    久住「・・・さて、署に戻るか」
    秦 「はい」

    二人は公園を後にする

    久住「・・・クソ、暑いな」
    秦 「またですか・・・」
    久住「またもなにも、暑いもんは暑いんだよ」
    秦 「まぁ、それはそうですけど・・・」
    久住「・・・セカンドインパクトか」
    秦 「この国から四季がなくなったのは、それのせいですね」
    久住「なぁ、知ってるか?」
    秦 「何がです?」
    久住「あの時・・・セカンドインパクトの時・・・南極には人がいたらしいんだ」
    秦 「・・・あの地獄の中心にですか」
    久住「・・・ああ、あの地獄の中心にな」

    81 硝蛇楼 ◆PymYnrJRCY :2007/01/27(土) 01:28:17 ID:???
    南雲「それで、対策については?」
    後藤「有効な策はまだ見当たらないらしいよ
       とりあえず例の肉片を四人の学者に見てもらうそうだ
       帝都大生物学部の池永教授、国立防疫センターの森久保博士
       東都生物工学研究所の来栖所長、そんでネルフの赤木博士」

    秦は、科研の岸田と共に『東都生物工学研究所』へと向かっていた

    岸田「外部の施設に分析依頼なんて、時間さえかけりゃうちでも出来るのにさ」
    秦 「科警研職員の誇りってやつかい?」
    岸田「恥さらしだよなぁ・・・・・・一つだけならまだしも、四カ所だぜ?」
    秦 「まぁ、時間がかかっちゃ困るんだけどさ・・・」
    岸田「・・・・・・ま、赤木博士に会えただけでも良しとするかな」
    秦 「そりゃまた、何で?」
    岸田「美人だったなぁ・・・」
    秦 「・・・・・・」

    秦は東都で、以外な人物と出会う

    秦 「驚いたよ、大学の先生だとばかり思っていたから」
    岬 「向こうはアルバイトなの。ここには内緒なんだけど」

    二人の出会いは、今から一ヶ月ほど前である
    車が故障して動けないでいた岬を、秦が大学まで送ったことがきっかけだ

    82 硝蛇楼 ◆PymYnrJRCY :2007/01/27(土) 01:29:05 ID:???
    岬 「このように体細胞の分裂回数には上限があり
       行動生物の寿命は有限であると考えられています
       細胞の寿命を決めるのは染色体の両端にある
       テロメアと呼ばれるDNA配列だと推定されており
       細胞分裂の度にこの領域が短くなっていく事から
       テロメアを命の回数券と呼ぶ学者もいます
       ところが、癌細胞にはテロメアを修復する機能があるため
       分裂回数に限度がなく永遠に増殖するという性質をもっています
       この細胞も小児性の癌で亡くなった患者の一部です
       本人は死んでいるのにその癌細胞は今でも生きている・・・不思議な気がするわね」

    岬がアルバイトをしている大学に、秦が忘れ物を届けに来た
    秦が岬を送ったとき、車にライターを忘れていっていたのだ

    岬 「・・・このためにわざわざ」
    秦 「まあ、それもあるんですけど・・・実はこれは口実でして」

    二人並んで大学内を歩いていると、生徒が声をかけてきた

    生徒「岬先生、デートですか?」
    岬 「そうよ」
    秦 「・・・岬さんって言うんですね」
    岬 「冴子、岬冴子です」
    秦 「あ、俺秦、秦真一郎です」

    83 硝蛇楼 ◆PymYnrJRCY :2007/01/27(土) 01:30:26 ID:???
    『どんな真実?あなたには真実や嘘の在りかが見えていて私には見えない
     あなたは大事な問題を片っ端から解決した気でいる・・・・・・でもどうでしょう?
     それはまだあなたが若くって苦しみ抜いた事がないからじゃなくって?
     私たちに比べれば、あなたはずっと勇敢で正直で真面目だけど
     でも少し寛大になって私を許してほしい
     だって、私はここで生まれたんだし、父も母もおじいさんもここで暮らし
     私はこの家が大好きで、この櫻の園のない生活なんか考えられない
     もしどうしても手放すというのなら、いっそ私も一緒に売ってちょうだい!』

    あれから二人はたびたび会うようになり
    それは男女の付き合いをしているといってよいであろう状態で
    事実、その通りであろう。秦は岬にたいし好意を持っている
    岬は気性が穏やかで、秦は一緒にいるだけで心が癒される感じがした
    刑事という職業は、実際その職業についてみなければ
    その苦労を知ることはできないであろう
    ふと、秦は岬が自分をどう思っているのか気になり
    隣に座っている岬の顔を見てみる
    じっと舞台を見ている岬の横顔は、やはり美しかった

    帰りの電車の中、秦は流れ行く夜の街をただ眺めていた
    この時、まだ秦は怪物に遭遇してはいなかった
    その怪物が後の二人の関係に、大きな波紋を広げることになるとは
    どうして予想することができたであろうか

    84 硝蛇楼 ◆PymYnrJRCY :2007/01/27(土) 01:31:33 ID:???
    岬「保健所?」
    秦「え?」
    岬「あなたの勤め先よ。公務員だって言ってたじゃない」
    秦「公務員には違いないんだけどね」

    秦はコーヒーの入った紙コップを置く
    その時、一枚の写真に目がとまった

    岬「娘よ」
    秦「・・・娘さん」
    岬「一美っていうの」
    秦「じゃあ・・・こちらはご主人・・・」
    岬「ええ、研究室の同僚だったわ」
    秦「・・・だった?」
    岬「事故で死んだの、三年前に」
    秦「悪い事聞いちゃったかな」

    呼び出しの内線がなり、岬が受話器をとる

    岬「はい、わかりました、すぐ参ります。ごめんなさい、所長に呼び出しくっちゃって」
    秦「いいよ、うちの証拠品の件かもしれないし」
    岬「え?」
    秦「一昨日、バビロン工区で事件があったの知ってる?そのときの証拠物件を分析依頼に来たんだよ」
    岬「あなた、警察の人?」
    秦「城南署、捜査課の刑事」
    岬「・・・確かに公務員ね」

    87 硝蛇楼 ◆PymYnrJRCY :2007/01/29(月) 10:51:15 ID:???
    ミサト「アスカは今頃、イヤラシイ女だって軽蔑してるわね」
    加持 「情欲に溺れているほうが、人間としてリアルだよ」

    ミサトは加持と密会していた

    加持 「例の貨物機だけどな、ホノルルから羽田に向かう前に、妙な所に立ち寄ってるんだ」
    ミサト「妙なとこ?」
    加持 「マーシャル諸島。アメリカが昔、水爆実験やってた場所だ
        あのあたりは米軍の施設が目白押しで、なんとも物騒な所でさ
        中にはP4クラスの防疫体制がしかれた島さえあるらしい」
    ミサト「P4とはまた・・・」
    加持 「それと、襲われた五台のレイバー。あれ、やっぱり全部シャフト製だったよ」
    ミサト「ケーブル工事中に襲われたやつは?」
    加持 「菱井の製品だけど、動力部にはシャフトの超電動モーターが使われていた
        問題はディスコの車だな。あれはなんで襲われたのか・・・」
    ミサト「う〜ん・・・なんでだろ・・・。あ、それと加持君?」
    加持 「なんだ?」
    ミサト「今はディスコじゃなくて、クラブって言うのよ」
    加持 「・・・・・・・・そういや肉片ってどうなったんだ?」
    ミサト「リツコが調べてる」
    加持 「何かわかったのか?」
    ミサト「・・・ニシワキ・セル」
    加持 「・・・・おいおい、マジか?」
    ミサト「一応、明日の昼過ぎあたりに東都に行こうかって思っているの」
    加持 「・・・大丈夫か?」
    ミサト「・・・ええ」
    加持「ニシワキか・・・」
    ミサト「・・・冴子」

    88 硝蛇楼 ◆PymYnrJRCY :2007/01/29(月) 10:52:30 ID:???
    次の日、ミサトはいつも通りネルフへ出勤していた

    リツコ「そう、行くことにしたの」
    ミサト「ええ」

    ミサトは、今日の午後に東都へと行くことをリツコに伝える

    リツコ「東都には連絡済み?」
    ミサト「んー、それがさぁ、決めたのって昨日の夜だから
        まぁ、昔に一回だけ、向こうの所長に会った事もあるし・・・」
    リツコ「たしか、お父さんが・・・」
    ミサト「・・・ええ。お父さんが昔、少しの間だけど、東都にいたのよ」
    リツコ「・・・大丈夫なの?」
    ミサト「だから大丈夫だっての!」
    リツコ「だからって・・・これ、私、初めて言った・・・」
    ミサト「昨日、加持のヤツにも言われたのよ・・・」
    リツコ「ああ、なるほどね」

    リツコはコーヒーをいれ、ミサトに手渡す

    ミサト「ん、アリガト」
    リツコ「東都なら、冴子がいるんじゃない?」
    ミサト「ええ。ニシワキ・セルについて何か聞ければいいんだけど・・・」
    リツコ「最後に会ったのって、娘さんの葬式の時だったわね・・・」
    ミサト「・・・ええ」

    その時、呼び出しの内線が鳴った

    89 硝蛇楼 ◆PymYnrJRCY :2007/01/29(月) 10:53:41 ID:???
    マヤ 『先輩!大変です!』
    リツコ「マヤ?何があったの?」

    受話器から聞こえるマヤの声は、かなり焦っている様子で
    どうやら緊急事態が起きたことが予想できた

    マヤ 『すぐに、すぐに来てください!細胞が急激に分裂を始めて・・・
        とにかくすぐ来てください!!』

    ミサト「何!?」
    リツコ「とにかく、研究室へ急ぐわよ!」

    二人が研究室で見たモノは、なにやらモゾモゾと動いている
    茶褐色の肉塊であった

    リツコ「こ・・・これは・・・」
    ミサト「うげぇ・・・何よこれぇ」

    それは緩慢に蠢き、ナメクジ状の黒い粘液となり
    それから機械油が漏れるように、油じみたいやらしい頭動触手を伸ばしていく
    濡れた表面にどす黒い斑紋が浮き上がり、見る間にそれは毒蜘蛛もどきとなった

    マヤ 「ウゥ・・・ウ・・・ッ・・・」

    あまりのそれのおぞましい姿に、マヤは吐き気を抑えることができない
    しかしそれは、すぐに新たなる変化を見せる。そして、ある姿に落ち着いたようだ
    それはまるで、『映画「エイリアン」』にでも出てきそうな
    不気味で、凶暴そうな怪物であった

    90 硝蛇楼 ◆PymYnrJRCY :2007/01/29(月) 15:37:58 ID:???
    ミサト「・・・いい?三つ数えたら私が隙を作るから、一斉に退避
        いいわね?」

    ミサトは周りに、小声で話しかける
    怪物はまだ、落ち着いたばかりで動きが鈍いようだ
    周りの様子を窺っているようにも見える

    ミサト「・・・・1・・・・2・・・・3!」

    そこにいた者達は、ミサトを含めて五人くらいしかいなかったため
    一気に入り口に向かっても、パニックになるようなこともないだろう
    皆が走り出したと同時に、ミサトは近くにあった椅子を怪物に向かって投げつけ
    すぐに銃を構える
    しかし・・・なんと光の壁が、椅子を弾き飛ばした
    瞬間、警報が鳴り響き使徒の襲来を告げる

    リツコ「A.T.フィールド!?」
    ミサト「まさか!?」

    その時、発令所では・・・

    青葉「こ・・・これは!」
    冬月「どうした!何が起こったんだ!使徒はどこに現れた!」
    青葉「大変です!使徒の反応は、本部内からです!
       ここは・・・例の怪物の肉片を調べていた研究室ですよ!」
    冬月「何!?(では、やはり・・・)」

    91 硝蛇楼 ◆PymYnrJRCY :2007/01/29(月) 15:39:12 ID:???
    冬月 「死んでいるのかね?」
    リツコ「生命反応は消えています。念のため、ベークライトで固めました」

    会議室の中心に、特殊ベークライトで固められた怪物が置いてある

    リツコ「このサイズでしたので、通風口に潜んだところを
        液体窒素で運良く処理出来ました」
    冬月 「そうか。A.T.フィールドは?」
    ミサト「どうやら物理的な衝撃にのみ、発動するようです」
    冬月 「なるほど、だから液体窒素で処理できたのか・・・」
    リツコ「ちなみに、A.T.フィールド発動時のみ、使徒の反応がでるようです」
    冬月 「だから今まで分からなかったということか・・・」
    マヤ 「この生物の細胞は、ニシワキ・セルと人の癌細胞の融合体のようなもので
        その増殖の特異性から、人為的操作が加えられた可能性が極めて高いと思われます
        きわめて驚異的な再生能力を有しており、いたずらに攻撃すれば
        分裂して増える可能性もあります」
    冬月 「では、どうする?」
    ミサト「目撃証言によれば、本体は十数メートルあるとか・・・
        少なくとも、今回のように処理することは出来ないと思われます」
    冬月 「ふむ・・・しかしその大きさではエヴァを使うにもな・・・」
    ゲンドウ「・・・葛城君、なにか作戦はあるか?」

    今まで黙って聞いていたゲンドウが、口を開いた

    92 硝蛇楼 ◆PymYnrJRCY :2007/01/29(月) 15:42:34 ID:???
    ミサト「やはり特車二課との共同作戦をとることになると・・・」
    ゲンドウ「・・・そうか。警察には私から連絡をしておく」
    ミサト「私は明日、東都に行こうかと思います」
    冬月 「東都生物工学研究所かね?まぁ、ニシワキ・セルと言えばやはり東都だな
        ・・・ご苦労、会議はこれまでだ。各自持ち場に戻ってくれ」

    青葉 「大変だったね」
    マヤ 「本当に怖かったんですよ・・・」
    日向 「まぁ、あれじゃあな・・・」

    リツコ「今日、行けなかったわね」
    ミサト「仕方ないわよ・・・ったく、コイツのせいで」

    皆はもう一度、怪物を見た

    ミサト「人の造りしもの・・・か・・・」

    ネルフ総司令官公務室

    冬月 「さて、委員会にはなんと言えばいいのやら・・・」
    ゲンドウ「使徒侵入の事実は無い」
    冬月 「そうは言ってもな・・・」
    ゲンドウ「問題無い」
    冬月 「・・・そうか」

    94 硝蛇楼 ◆PymYnrJRCY :2007/01/30(火) 16:46:33 ID:???
    秦 「この南極の隕石に含まれていた物質は、発見者の名をとってニシワキ・トロフィンと命名された
       1998年西脇純一とその共同研究チームは、ニシワキトロフィン存在下で発現する遺伝子を発見
       この遺伝子の研究中に、猛烈な勢いで分裂する細胞株の培養に成功した
       これがニシワキセルである・・・・・・」

    秦と久住は、ニシワキ・セル関連のことについて調べていた

    久住「どうだ、何か分かったか」
    秦 「捜査の役に立ちそうなのはあまり・・・」

    久住は、秦が使用しているパソコンの画面を見る

    久住「・・・南極の隕石、ね・・・」
    秦 「思い出しますね・・・セカンド・インパクト」
    久住「地獄だったな」
    秦 「まさかあれから15年でここまで復興するなんて、思っていませんでしたよ
       世界の終わりだと思いましたからね・・・」
    久住「まぁ、それだけ金が動いたってことだ。どっかの国じゃ、今でも一秒に一人
       食いモンがなくて子供が死んでいくらしいからな」
    秦 「セカンド・インパクト前でも、三秒に一人、死んでいってたらしいですけどね」
    久住「日本は前から、金や食料の無駄が多かったってことだな
       ・・・・南極と聞くと、連鎖的に嫌なこと思い出すな」

    これ以上この話題を続けると、空気が重くなっていってしまうので
    秦は調査を再開させることにした

    秦 「・・・一般記事の方を探してみますね」

    95 硝蛇楼 ◆PymYnrJRCY :2007/01/30(火) 16:47:58 ID:???
    東都生物工学研究所、所長室

    宮ノ森「信じられない、CD-250が増加している・・・」
    来栖 「あれが三十日以上生存した印だ」
    宮ノ森「しかし、廃棄物シリーズは餌のニシワキ・トロフィンの配給が断たれれば
        テロメアズ遺伝子が復活活性化します。そうなればアポトーシスが速やかにおこって」
    来栖 「死ぬ、はずだと?」
    宮ノ森「はい」
    来栖 「13号に自己崩壊プログラムは仕掛けられていなかった」
    宮ノ森「えっ・・・?」
    来栖 「おまけに13号には人の、癌細胞が使われておった
        岬君、君がやったのかね・・・?」
    岬  「はい。実験用の個体なので、生存を優先させました」
    来栖 「なぜ私に黙っていた」
    岬  「許可がおりないと思いましたので」
    来栖 「当たり前だ!癌細胞の変異性の高さを知らん君じゃあるまい?」
    岬  「所長は、あの子が生きていて嬉しくはないのですか?」
    来栖 「実験室のプールならな・・・。君はさがっていい、後は私と宮ノ森君で手を打つ」
    岬  「所長・・・所長はこの事態をどう収集されるおつもりですか」
    来栖 「あれは抹殺する。クライアントには提案済みだ」
    岬  「失礼します」

    岬は所長室を後にした

    宮ノ森「もしかして、主任がニシワキトロフィンを与えてたんじゃ・・・?」
    来栖 「池に撒くのとは訳が違う、相手は東京湾だぞ?あり得んよ」
    宮ノ森「他所の分析を見たら、警察は真っ先にうちを疑うでしょうね」

    96 硝蛇楼 ◆PymYnrJRCY :2007/01/30(火) 16:49:17 ID:???
    次の日、ミサトは東都に来ていた

    受付 「葛城様・・・ですか?」
    ミサト「はい」
    受付 「お約束は?」
    ミサト「いえ、その、・・・とりあえず名前だけでも伝えてはもらえませんか?」
    受付 「はぁ、それでしたら・・・」

    宮ノ森「所長、内線です」
    来栖 「ん?ああ、スマンな」

    来栖は受話器を受け取った

    来栖 「客?警察が来るに早すぎるが・・・何、葛城?葛城と名乗ったのか?
        ああ・・・ああ、分かった、通してくれ」

    ミサト「お久しぶりです」
    宮ノ森「所長、こちらの方は?」
    来栖 「ああ、こちらは葛城博士の娘さんだよ」
    宮ノ森「葛城博士の?」
    来栖 「そうだ。たしか、20年近く前に一度お会いしたことがありましたな?」
    ミサト「憶えていてくださったんですね」
    来栖 「ああ、勿論だよ。いや、これはまた美人になられて」
    ミサト「いえ、そんな・・・」

    97 硝蛇楼 ◆PymYnrJRCY :2007/01/30(火) 16:50:47 ID:???
    来栖 「たしか岬君とは大学の同期でしたな」
    ミサト「はい。あの、今、彼女はどちらに?」
    来栖 「おや、岬君に用があったのですか?
        ・・・・・・実は、今日はまだこちらには来ていないんですよ
        宮ノ森君、何か聞いてはいないのかね?」
    宮ノ森「いえ、私は何も聞いていません」
    来栖 「むぅ・・・そうか・・・。そういえば、今は何を?」
    ミサト「私ですか?私は今、ネルフに勤めています」
    宮ノ森「!?」
    来栖 「・・・・そうですか、ネルフに・・・」

    ミサト「失礼します」

    ミサトは途中廊下で、自分を案内してくれた研究員に連れられた
    二人の男とすれ違った。秦と久住である

    ミサト(あの二人、刑事ね。まぁ、あの様子じゃ、すぐにボロが出るわ)

    ミサトは先ほどの、自分がネルフの人間だと分かったときの
    宮ノ森の動揺を、見逃してはいなかった

    久住「奴らの顔見たかよ?ありゃクロだぞ、クロ」
    秦 「ダミー会社の持ち主がわかったんですね」
    久住「当たりだ。宮ノ森静夫・・・所長の横にいたうらなり瓢箪の名義になっていた」

    事実、ミサトの予想した通りになっていた

    100 硝蛇楼 ◆PymYnrJRCY :2007/02/01(木) 07:31:45 ID:???
    秦は、久住の家に呼ばれていた

    秦 「見せたいものって、それですか」
    久住「ああ」

    久住は秦に、ある資料を手渡す

    久住「西脇家の墓参りをしていた女がいたんで、交通課の手を借りて調べた」

    秦がページをめくると、そこには岬の運転免許証のコピーがあった

    久住「姓名は岬冴子。旧姓は西脇。例の、教授の娘だ
       ・・・お前、付き合ってるのか?」
    秦 「・・・そんな事まで調べたんですか」

    秦の表情は険しい

    久住「女のイニシャルがライターと同じだった
       それに最近のお前の様子、調べた訳じゃない」

    秦が岬にライターを返しに行く前、秦の車に同乗した久住に
    岬のライターを見られていたのを、秦は思い出した

    秦 「彼女に嫌疑でも?」
    久住「東都の主任研究員だからな、疑うのは当たり前だろう」
    秦 「久住さんの、勘違いだと思います」
    久住「根拠を言ってみろよ」

    101 硝蛇楼 ◆PymYnrJRCY :2007/02/01(木) 07:33:33 ID:???
    秦は一瞬間を置き、キッパリとこう言い放った

    秦 「彼女は犯罪を犯すような人間じゃありません」

    その回答に、久住は思わず失笑してしまう

    久住「本当に親切でいい方なんです、あんな事をやるなんて私とても信じられません
       ・・・・・・フ、よく聞くよな。連絡はとっているのか、岬冴子さんに」

    秦は答えない

    久住「・・・電話は?」
    秦 「・・・繋がりません」
    久住「お前も本当はわかってるんだろう?」
    秦 「久住さん、岬冴子は僕が捜査します」
    久住「パソコンネットの伝言板に書くのか?逃げたガールフレンドを捜してします、って」
    旗 「久住さんのも書いてあげましょうか?私を捨てた家族を捜していますって」

    これでは売り言葉に買い言葉である
    それは秦も自覚している
    だが、秦はどうしても冷静ではいられないようだった

    久住「・・・秦、頭を冷やせよ」

    102 硝蛇楼 ◆PymYnrJRCY :2007/02/01(木) 07:34:44 ID:???
    ミサトが岬家を訪れると、一人の男が岬家の玄関前に立っていた
    どこか見覚えがあると思い近づいてみると、それは東都ですれ違った
    二人の刑事のうちの一人だった

    ミサト「あなたはたしかで・・・」
    秦  「あ、たしか東都で・・・」

    岬の義父「岬、至毅です」
    秦   「城南署捜査課の刑事、秦真一郎と申します」
    岬の義父「あなたはたしか、葛城さん?」
    ミサト「はい、お久しぶりです」

    居間へと案内された秦とミサトが待っていると
    岬の義母が、奥から何かを持ってきた
    どうやら、秦に宛てた封筒のようだ

    岬の義父「一昨日の夜、冴子から預かったものがあるのです
          あなたが来たら渡してくれ、と頼まれました。切羽詰まった様子だったので
          こちらも気圧されて詳しい事情は聞かずじまいでしたが・・・」
    岬の義母「あの、冴子が何かいたしましたか?」
    秦  「まだわからないんです。まだわからないから、こうして伺っているんです」

    封筒の中には、ビデオテープが入っていた

    103 硝蛇楼 ◆PymYnrJRCY :2007/02/01(木) 07:36:03 ID:???
    『パパ、ちゃんと撮ってね』

    そのビデオには、岬家の日常風景が収められていた

    岬の義父「私たちの息子が事故で死んだあと、半年もたたない内にこの子も入院しましてね
          それからはあっという間でした」
    秦  「亡くなられたんですか」
    岬の義母「小児性の、癌だったんです。葛城さんは、葬式に来てくださいましたね」
    ミサト「・・・はい」

    ミサトはその時の様子を思い出しているのか、返事は重かった

    岬の義母「子供どころか孫まで私達より早く逝ってしまうなんて・・・」

    画面の中で楽しそうにピアノを弾く少女は、もうこの世にはいない
    この国が復興するためにたくさんの資金が使われた
    そして、今現在もたくさんの餓死者が出ているのにもかかわらず
    この国は、そしてネルフは大量の資金を使い続けている
    世界再建の要であるこの国のために、毎年餓死者が出ているのである
    そうやって、たくさんの犠牲者の上に成り立っているこの国において
    子供一人の命を救うことが出来ないとは・・・

    ミサト(・・・何が科学よ・・・)

    ミサトは、無力な自分自身にも腹が立った
    そんなミサトの心情を読み取ったのであろうか

    岬の義父「・・・何も、あなたがそんな顔をすることはありませんよ」
    ミサト「・・・はい、すみません」

    104 硝蛇楼 ◆PymYnrJRCY :2007/02/01(木) 07:37:03 ID:???
    ミサトは常日頃から、子供を戦場に送り出すことへの罪悪感を感じていた
    出来ることならば、自分の手で使徒への復讐を遂げたいのだが
    それは叶わぬ願いである。そしてそれが、無力感につながる
    一美が癌で亡くなったのは、ミサトのせいではない
    しかし、ミサトの心を支配するこの罪悪感と無力感は
    それすらもミサトに責任を感じさせてしまっていた
    悲しみが、苦しみが、ミサトの心の隙間に入り込み
    鈍い痛みをミサトに覚えさせているようだった

    ミサト(もし私がネルフの人間ではなかったら、こんなふうには感じないのかしら・・・)
    岬の義母「・・・葛城さん?」
    ミサト「あ、はい、すみません」
    岬の義父「いや、何もそんなに謝らなくても・・・」
    ミサト「・・・すみません」

    秦  「では、失礼します」
    ミサト「失礼します」

    二人が玄関から出ると、そこには加持がいた

    ミサト「加持君、どうしたの?」
    加持 「ありゃ、一人じゃなかったのか?」
    ミサト「こちら、城南署の秦刑事」
    加持 「ああ、警察の人か。ネルフ特殊監察部の加持です」
    秦  「あ、どうも、秦です」

    105 硝蛇楼 ◆PymYnrJRCY :2007/02/01(木) 18:30:32 ID:???
    15年前、常時夏になってしまった日本
    太陽は道路だけではなく、大気さえも焦がさんとばかりに輝いている
    15年で人の身体が劇的な進化を遂げるということはなく
    それ故に人々は、この澄み渡った青空さえも忌々しげに見上げている
    さらに言えばこの気象はセカンド・インパクトが齎したモノであり、それがあったという事実を思い出させ
    本来の太陽、青空が、人々の心に与える感情とは違う方向性のそれを与えてしまっている
    いや、本来の、清々しさ、爽やかさといった類の感情を、まったく感じないわけではないのではあるが
    やはり夏の有難みは冬があってこそであろう。その逆もまた然りである
    だが、夏であるからこそ有難みを感じるモノというのは、なにも冬だけではない

    加持 「ふ〜、涼しいなぁ」

    ミサトと秦は加持に連れられ、喫茶店へとやってきた
    冷房がよく効いている

    秦  「あの、よかったんですか、僕が一緒で・・・?」
    加持 「本当は葛城と二人っきりがよかったんだけど・・・・イテ!」

    加持はミサトに太ももを抓られてしまった

    加持 「冗談なのに・・・」
    ミサト「ったく・・・」
    加持 「まぁ、今回は警察と共同作戦を取ることになるらしいし
        それに話をしてみたいとも思っていたしな」
    秦  「え、もしかして僕とですか?」

    106 硝蛇楼 ◆PymYnrJRCY :2007/02/01(木) 18:31:40 ID:???
    加持 「葛城と岬冴子が大学の同期ってのは知ってる?実は俺もなんだよ」
    秦  「あぁ、そうだったんですか・・・」

    その時、ミサトの携帯が鳴った

    ミサト「はい、もしもし・・・・あ、リツコ?どうしたの?」

    そして秦の携帯も鳴った

    秦  「はい、秦ですが・・・」

    二人は二言三言話すと、携帯を切った

    秦  「あの・・・」
    加持 「ああ、すまないね、話はまた今度でいいから。それと・・・」
    秦  「・・・何ですか?」
    加持 「米軍に気をつけたほうがいい」
    秦  「・・・・はぁ、じゃあ失礼します」

    そう言うと、秦は店を後にした

    加持 「さて、俺達も行くか」
    ミサト「行くって、どこによ?」
    加持 「どこって、ネルフに決まってんだろ?」

    107 硝蛇楼 ◆PymYnrJRCY :2007/02/01(木) 18:33:22 ID:???
    リツコ「このウィルスはテロメラーゼの発現をおさえ
        更に細胞分裂を促進する効果も持たせてあるの
        実験結果は良好。細胞は急速に死滅し崩壊は周囲の細胞群に広がっていくわ」
    ミサト「これを弾頭に詰め、目標に撃ち込めば・・・」
    リツコ「ええ、殲滅できるわ」

    リツコが培養したこのウィルスを使用すれば
    目標を殲滅できる。しかしある問題があった
    緊急に培養したため、培養に成功のは弾頭一発分のみ

    ミサト「・・・一発か」

    しかしそこへ、警察からの連絡が入った
    戦略自衛隊が東都の協力を得て、ウィルス弾頭の試作に成功したらしい
    そちらも一発

    ミサト「計二発ね・・・」
    リツコ「どう?」
    ミサト「大丈夫、やれるわよ。と言うより、やらなくてはいけないのよ」
    リツコ「・・・そうね」
    ミサト「後はどこにどうやっておびき寄せるか・・・」

    108 硝蛇楼 ◆PymYnrJRCY :2007/02/01(木) 18:34:30 ID:???
    秦  「久住さん。何がわかったんですか?」
    久住 「ああ、来たか。実はな・・・」

    久住は、岬のアルバイト先の大学の岬のロッカーから秦が見つけた
    音源を科研にて分析をしていて、ある発見をした

    久住「シャフト社製の超電動モーター音、クラブのダンスミュージック
       あとお前が岬冴子の大学から持ち帰ってきた例のアレ、すべての共通点があった」
    秦 「・・・共通点ですか?」
    久住「25キロHz以上の波形の良く似た高い音、つまり超音波だな」
    秦 「・・・・怪物は超音波を聞いてやってきたということですか?
       クラブの音楽なんてありふれたモノなんじゃ・・・」
    久住「クラブではアナログレコードを使っている
       CDでは20キロHz以上の高い音はカットするが、アナログ盤では40キロHz近くまで再生できる」
    秦 「・・・・・・」
    久住「どうやら岬冴子はこの音で怪物を呼んで、餌を与えていたみたいだな」
    秦 「・・・そうですか」

    秦は俯いてしまっている

    久住「秦、いろいろ思うこともあるだろうがな・・・
       あの化物をこれ以上のさばらせておくわけにはいかない」
    秦 「はい、わかります」
    久住「アイツ用の武器が完成したらしい。倒せる算段がついたんだ
       お前は、今はそのことだけを考えていればいい。今はな・・・」
    秦 「・・・はい」





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