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  • 編集元:旧シャア専用板より

    162 ブライトノア・クロニクル(下)20/25 :04/07/24(土) 22:30 ID:???
    最終章 電話

     部屋に戻ると、テレビがついていた。僕はきちんと消してから部屋を出ていた筈なのに何故かテレビはついていて、そこではくたびれた顔のアナウンサーが今回の事件についての感想を述べていた。

    『ハサウェイ・ノアは、シャアの反乱軍のモビルスーツを撃墜した経歴を持つニュータイプだったということであります。
    その彼が、マフティー・ナビーユ・エリンを名乗って、連邦政府の地球再生になんの配慮もみせない政策に対して、抗議の行動をとったのであります。にもかかわらず、連邦政府は、そんな抗議には一切耳をかさず、ハサウェイ・ノアに対する報復手段として、その父親に処刑の執行をさせるという、人道を無視した信じられない行動に出たのであります』

     僕はしばらく彼らの話を聞いた。どうやらマスコミは今回の事件について連邦批判をするほうに方針を決めたみたいだった。
    いつものように圧力がかかってすぐに手のひらを返すことになるだろう。言論の自由なんて言葉はとっくの昔に形骸化している。
    僕はテレビに映し出されるコメンテーターの顔をじっとながめた。誰もが苦虫を噛み潰したようなしかめつらをしていた。
    おいおい、ちょっと待ってくれ。どうしてお前達がそんなかおをする権利があるのだ?
    僕はそう思う。彼らのいっていることは正しいかもしれない。連邦は確かに間違った事をしたし、僕らはそれで深く損なわれたのだ。
    けれど、僕はハサのことを知らない人に同情も怒りもしてもらいたくなかった。
    誰にもなにもいってほしくなかった。静かに海の底に眠らせておいてあげたかった。それはもう既に損なわれてしまったものなのだ。
    彼らの会話はその損なったものを残念だ、とか許せない、とかいうだけで、なにもそのあとに得られるものはないのだ。
    アムロやシャアのときとおなじく彼らは死体を掘り帰すだけなのだ。屍肉にたかるハゲタカの群れみたいに。

    僕はリモコンをつかんで、テレビのスイッチをきった。そして、壁ぎわのカーテンをあけると、窓越しに外の景色を眺めた。
    ちらちらと部分部分に明りがともっているところはあるが、大抵は闇のなかにひっそりと静かによこたわっていた。
    ときおり、車が中央の四車線の道路を横切っていくのがみえた。トラックが時折思い出したようにとおっていった。
    こうして見ているとここで激しいモビルスーツ戦があったとは信じられなかった。それほどにアデレートは静かに深く眠っていた。
    そして、全ての存在に雨が均一に降り注いでいた。

  • 163 ブライトノア・クロニクル(下)  21/25 :04/07/24(土) 22:36 ID:???
     ソファに戻った僕はふと気になってもう一度脈をはかった。ちゃんと親指に血液の流れを感じることができた。
    僕はほっとする。そして、手首から手を離すと今度は左胸にあてる。マフティーが最初あったときに触っていたところにしっかりとあてる。
    心臓が確かに脈打っているのがわかった。太鼓をゆっくりと叩くように定期的に力強い単調な音がてのひらから伝わってくる。
    あまりに鮮明に聞こえるので他人の心臓ではないか、と僕は不安になる。けれどそんなことはない。これは僕の心臓なのだ。
    暫くその音を聞いていると、ほんのすこしだけ、その心臓音の中に混じっている音があることに気がついた。
    とてもとても微かな音だ。海の底で眠る貝の呼吸音よりもかぼそい、コロニーにそそぐ雨ふりのような繊細な音だ。
    それでも僕は確かに聞くことができる。僕はそれを感じ取る事ができる。
    僕はその音を受けとめる。


    ぎこぎこ。とんとん。かたかた。


    工事の音だ、と僕は思う。昼間僕が寝ぼけて聞いたと勘違いした音だ。それが僕の中から聞こえてくる。
    心臓の音にまじりながら、確かに僕の耳に伝わってくる。ミノフスキー散布下の通信みたいなひそやかさで。


    ぎこぎこ。とんとん。かたかた。


    そのとき、物事が全て反転したようになる。僕は一瞬のうちに全てを理解する。
    何もかもが突然に僕の前で全て答えをあらわす。あらゆるものが全ての象徴である太陽の前にさらけ出される。
    僕は太陽を直視できる。まるで目の前に分厚いサングラスがかけられているみたいに。

    僕らはーーーそう、僕らはーーー誰もが心のなかでガンダムを作っているんだ。
    比喩でもメタファーでも形而上学的でもアンチテーゼでもなく、それは紛れもない事実なのだ。
    工場の中で、僕らはのこをふるい、とんかちを使い、のこぎりをひきながら自分だけのガンダムを作り上げている。
    ラジカセを聞き、疲れたらピナ・コラーダを飲んで休憩し、友人と談笑したあとにまた作業に取り掛かるのだ。
    彼らは彼らであり、また同時間的に僕自身であるのだ。アムロは僕であり、シャアもまた僕であり、また僕は彼らの一部なのだ。
    あそこにあるガンダムは僕がつくりあげていた僕のガンダムなのだ。

    そして、僕はおもう。MSピープル。全てはこれから始まったのだ。あのラーカイラムのドックが全ての前兆だったのだ。
    僕はもういちど、まぶたの裏にあのときの光景を再生させる。最初から最後まで間違いなく。
    頭の一番奥のあたりがちりちりと痛む。まるでなにものかが僕に思い出させないように妨害しているみたいだった。
    けれど、僕は痛みを耐えて思い出す。思い出さなければいけないのだ。大きく息を吸い、長い時間をかけてそれを吐き出す。
    酸素が脳にまでいき、痛みを和らげて、僕に思考をすることを許可してくれる。僕は思う。MSピープル。



    MSピープルは三人だった。 そ し て、僕 の 家 族 も 三 人 な の だ。
    あれはミライとチェーミンとハサウェイだったのだ。彼らは僕のために現実世界でガンダムをつくっていたのだ。

    僕は短く息を呑み、ゆっくりとそれを吐き出す。吐き出した息は、命令を初めて受けた新兵みたいに固くとても強張っている。
    どうしていままでこんな事に気がつかなかったのだろう。ハサウェイは僕にメッセージを送ってくれていたのだ。
    まうでホテルのボーイが夕刊をトレイにいれてもってくるように、それはとても丁寧に慎重に届けられていたのだ。


    164 ブライトノア・クロニクル(下)  21/25 :04/07/24(土) 22:46 ID:???
     ソファに戻った僕はふと気になってもう一度脈をはかった。ちゃんと親指に血液の流れを感じることができた。
    僕はほっとする。そして、手首から手を離すと今度は左胸にあてる。マフティーが最初あったときに触っていたところにしっかりとあてる。
    心臓が確かに脈打っているのがわかった。太鼓をゆっくりと叩くように定期的に力強い単調な音がてのひらから伝わってくる。
    あまりに鮮明に聞こえるので他人の心臓ではないか、と僕は不安になる。けれどそんなことはない。これは僕の心臓なのだ。
    暫くその音を聞いていると、ほんのすこしだけ、その心臓音の中に混じっている音があることに気がついた。
    とてもとても微かな音だ。海の底で眠る貝の呼吸音よりもかぼそい、コロニーにそそぐ雨ふりのような繊細な音だ。
    それでも僕は確かに聞くことができる。僕はそれを感じ取る事ができる。
    僕はその音を受けとめる。


    ぎこぎこ。とんとん。かたかた。


    工事の音だ、と僕は思う。昼間僕が寝ぼけて聞いたと勘違いした音だ。それが僕の中から聞こえてくる。
    心臓の音にまじりながら、確かに僕の耳に伝わってくる。ミノフスキー散布下の通信みたいなひそやかさで。僕はハッとなる。
    そのとき、物事が全て反転したようになる。僕は一瞬のうちに全てを理解する。
    何もかもが突然に僕の前で全て答えをあらわす。あらゆるものが全ての象徴である太陽の前にさらけ出される。
    僕は太陽を直視できていた。まるで目の前に分厚いサングラスがかけられているみたいに。

    僕らはーーーそう、僕らはーーー誰もが心のなかでガンダムを作っているんだ。
    比喩でもメタファーでも形而上学的でもアンチテーゼでもなく、それは紛れもない事実なのだ。
    工場の中で、僕らはのこをふるい、とんかちを使い、のこぎりをひきながら自分だけのガンダムを作り上げている。
    ラジカセを聞き、疲れたらピナ・コラーダを飲んで休憩し、友人と談笑したあとにまた作業に取り掛かるのだ。
    彼らは彼らであり、また同時間的に僕自身であるのだ。アムロは僕であり、シャアもまた僕であり、また僕は彼らの一部なのだ。
    あそこにあるガンダムは僕がつくりあげていた僕のガンダムなのだ。

    そして、僕はおもう。MSピープル。全てはこれから始まったのだ。あのラーカイラムのドックが全ての前兆だったのだ。
    僕はもういちど、まぶたの裏にあのときの光景を再生させる。最初から最後まで間違いなく。
    頭の一番奥のあたりがちりちりと痛む。まるでなにものかが僕に思い出させないように妨害しているみたいだった。
    けれど、僕は痛みを耐えて思い出す。思い出さなければいけないのだ。大きく息を吸い、長い時間をかけてそれを吐き出す。
    酸素が脳にまでいき、痛みを和らげて、僕に思考をすることを許可してくれる。僕は思う。MSピープル。



    MSピープルは三人だった。 そ し て、僕 の 家 族 も 三 人 な の だ。
    あれはミライとチェーミンとハサウェイだったのだ。彼らは僕のために現実世界でガンダムをつくっていたのだ。

    僕は短く息を呑み、ゆっくりとそれを吐き出す。吐き出した息は、命令を初めて受けた新兵みたいに固くとても強張っている。
    どうしていままでこんな事に気がつかなかったのだろう。ハサウェイは僕にメッセージを送ってくれていたのだ。
    まうでホテルのボーイが夕刊をトレイにいれてもってくるように、それはとても丁寧に慎重に届けられていたのだ。


    165 ブライトノア・クロニクル(下)  22/25 :04/07/24(土) 22:51 ID:???
     僕は頬に手をやる。そこは濡れていた。最初僕はそれがどうしてかわからなかった。
    なぜこんなところが濡れているんだろうと真剣に思った。雨漏りでもしたのかと思って天井をみあげたりもした。シミ一つなかった。
    そして、それから長い時間をかけてから、ようやく自分が泣いていることに気がついた。
    僕は泣いているのだ。ようやく僕は泣く事ができたのだ。
    あたたかな液体が僕の頬をとおり、顎の先までいったところで暫く考え込むようにとまった。そしてためらうようにぽとり、と床に落ちた。
    涙は絨毯のなかにゆっくりと吸いこまれていった。僕はそれをじっと見つめる。視界は微かにゆがんでいて、絨毯の幾何学模様を更に歪ませた。
    身体中の水分が全て出ているような気がした。涙はいつまでたってもとまらなかった。
    僕は身体がこのままひからびていってしまっても別に構わないと思った。むしろ幸福のように想えた。
    アデレートで月と共に眠るガンダムのように、それは一種のハッピーエンドなのだ、と僕には理解できた。
    だって、僕は泣いているのだ。


     最後に泣いたのはいつだったかな、と僕はおもう。
    砂漠で泣いたとき以来だ。一年戦争が終わったあと、僕はあそこで二時間泣いたのだ。もうそれは20年以上前のことだ。
    あのときも「木馬」だった。そしていま僕は「もくば」ホテルで泣いている。あぁ、やっぱり繋がっている。「へその緒」みたいに。
    僕はあのときのことを思い出す。当時の僕はいったいなにを考えてすごしていたんだろう。さっぱり思い出せない。
    あの頃の僕はハサウェイよりずっと若かったんだ。それはなんだか信じられない気がする。


     涙がダムの水が枯れるように突然に止まった後、僕は湯船にお湯を張り、ごく簡単にシャワーを浴びた。
    浴室から上がると手早く備え付けのバスタオルで身体を拭き、新しいパンツとズボンを履いた。
    新しく新調した紺のポロシャツを着て、小さいタオルで頭の水気をとる。


     僕はサイドテーブルの上にだしっぱなしになっていたミネラルウォーターを飲むと、ソファに腰を下ろした。
    まるで一日に五回の戦闘を繰り返したように僕は疲れていた。このまま泥のように眠ってしまいたかった。これ以上何も考えらなかった。
    いまがいったい何時なのかもわからなかった。僕にわかるのは全てが終わりつつあるということだけだった。
    目を閉じてしまうと、睡魔が影のようにやってきて、僕の身体のなかに入りこもうとしてきた。
    そして、彼は僕の耳元でひっそりとネオジオン国歌を歌っていた。やれやれ、どうしてネオジオン国歌なのだ?
    潜在意識下では僕はジオンが好きなのだろうか?そうかもしれない。僕はそんなことを考えながら、ゆっくりと泥の中に沈みこんでいった。
    どこまでもどこまでも際限なく落ちていった。泥はあくまでも泥で底など存在していない。僕はどんどんと沈みこんだ。


    166 ブライトノア・クロニクル(下)  23/25 :04/07/24(土) 22:56 ID:???
     そのとき、突然電話が鳴る。死んでいたはずの電話が突然生を取り戻し、部屋と僕を震わせる。
    冷蔵庫が震え、シャンデリアが震え、テレビが震える。僕の心臓は音を立てて激しく収縮する。睡魔は何処かへ消えてしまう。
    首元まで使っていた泥はきりのように消えてしまい、僕の意識は完全に覚醒する。
    電話だ。ソーラーレイをくらった連合艦隊のように僕は電話をじっと凝視した。電話が鳴っているのだ。その意味を僕はよみとる。

     僕はこの電話が誰からのものかいまなら判然とわかる。ミライだ。ミライからだ。この電話はミライから僕へとかかってきたものなんだ。
    僕は電話回線の向こうにいるミライとチェーミンをおもった。彼女達がこの世界のどこかにある電話ボックスの片隅から
    僕のホテルのアドレスを回している光景をおもった。僕は彼女がアドレスをまわす白い指先まではっきりと思い浮かべる事が出来る。
    けれど、そこまでだ。僕の想像は彼女達を実体として思い描かれるまえに電話の音にかき消せられてしまう。

    僕は電話に手を伸ばす。けれど、伸ばすだけだ。決して受話器には触れない。夕方と同じように切れたら、と僕は思う。
    そしたらもう二度と彼女は電話をしてこないだろう。そして、永遠に僕らは出会う事がないのだ。
    その可能性が僕に受話器をとらせることをためらわせる。
    僕は唾を飲みこむ。水がなみなみと満たされている井戸の中に石を投げ込んだような音が耳の裏でする。
    世界中に僕の唾液が喉を嚥下していく音が響く。大丈夫、僕は呟く。

    とるんだ。

    誰かが僕にそう囁く。森の奥底にある水溜りみたいな場所からそんな声が聞こえてくる。
    それはロビーで聞こえてきたあの声だ。僕を求めていたあの声だ。僕は思う。これは誰かの声ではない。これは僕だ。
    僕自身が僕に向かって発している声なのだ。ガンダムをつくるのも僕だし、予言をつくるのも僕だし、工場にいるのも僕なのだ。


    とるんだ。


    わかっている。
    僕はその声に返事をする。僕は僕自身に返事をする。ぼくはここで恐れてはいけないんだ。
    彼女は僕を求め、僕は彼女を求めているのだ。僕は鳴り響く電話の受話器にひるまずに手を伸ばし、しっかりと掴む。
    僕はこれで僕の失ったものをとり戻すことができるのだ。それは一度失われたにせよ、決して損なわれてはいないのだ。
    電話の鳴り響く音が僕の聴覚を刺激する。それはまるで僕のなかにある閉ざされたドアをノックしているみたいだった。
    夕刊と地図を届けてくれたボーイみたいに。ミライは僕にこの扉をあけるチャンスをくれているのだ。

    「とるんだ」と、僕は口に出す。言葉は今度は死ななかった。生きて、僕と僕の腕に活力をあたえてくれた。大丈夫、僕は呟く。
    そして、一旦ゆっくりと呼吸をしたあとに僕はそっと受話器を取り上げた。頭の中ではネオジオン国歌が流れつづけていた。

                                                                             
                                                                                了



    167 ブライトノア・クロニクル(下)  24/25 :04/07/24(土) 23:04 ID:???
    <ギギ・アンダルシアの手紙 その2>

    …だから、あたしはケネスが何をしようとなにも詮索しないようにしています。
    ただ、本を読んで、そこにある過去から何かを読み取ろうとしています。けれど、なかなか読み取れません。
    もっともっと勉強しないと私にはそれらはとてもむずかしすぎるんです。



     読書に疲れたとき、いつも貴方のことを考えます。
    二人で過ごした夜のテントのことを考えます。あのとき、どうして貴方は私を抱かなかったんだろうって。
    クェスっていう昔の恋人のことがその原因なのかな、って最初はおもいました。義理だて、っていうんじゃないけど
    それに近いものだったのかなって。また、あたしが身体を売っていたからかな、とも思いました。
    売春婦みたいな女性と寝るのはきっと厭なんじゃないかなって。
    けど、あたしは精神的には身体を売ってるなんて思ってなかったんです。伯爵は寂しい人だったし、あたしも寂しかったんです。
    その空白を二人でおぎなっていただけなんです。セックスはいわゆるその手段にすぎなかったんです。
    それはまるで父親や母親の胎内で眠るのと同じなんです。もちろん、伯爵はあたしのおじいさんでも肉親でもなんでもないけれど、
    そこにあったのはそういった種類のものだったんです。うまくいえないけど。


     それで、、ハサウェイはそんなあたしのなんていうんだろ・・・弱さ?そういったものが
    嫌いだったんじゃないかな。それが自分の弱さを誘発してしまいそうで。だから、あたしとセックスをすることで
    傷の舐めあいみたいになるのをいやだったんじゃないのかな。いまはそう考えてます。
    けれど、正直あたしはハサウェイにあたしを抱いて欲しかったんです。たとえそれがいっときの快楽でも
    それに溺れることができるのが人間だし、可愛いと思えるから。あたし、やっぱりただの人間なんです。勝利の女神でもなんでもなく。
    性欲だって人並みくらいあるし、このまえだって一人でちょっとしちゃいました。
    そして、こんな気持いい事もうハサウェイはできないんだ、って思いました。ごめんなさい。



    168 ブライトノア・クロニクル(下)  25/25[いままで読んでくれたひとありがとうございましたsage] :04/07/24(土) 23:10 ID:???
    わたし、何を書いてるんだろ。ちょっと話題変えます。



     今は夜中です。ここから見る月はとてもとてもくっきりとしています。目を凝らすと岩のくぼみとかも全部わかっちゃうくらい。
    本当に綺麗です。実際はそれほど綺麗じゃないのにね。とおくからみるとすごおおく綺麗にみえます。不思議なものです。
    あたしは月をみるとあの連絡船で貴方とあったときのことを思い出します。あれからもう3ヶ月あまりがすぎたんだっておもいます。
    あっという間だった気がします。テレビでは未だにマフティーについての記事が後をたちません。
     そうそう。貴方のお父さんが退役したって、昨日の夕刊にかいてました。一面記事にブライトさんのこれまでの乗艦記録や
    艦長としての戦果記録がたくさんのってました。ほんとすごい人だったんだとびっくりしちゃいました。
    隅から隅までしっかり読んだのだけど、これからどうするのかについては書いてませんでした。
    ただ、息子のこと(ハサウェイのことよね)については彼は何も喋らないと言うこれまでのスタンスを通しぬいたってのってました。
    えらいって、感心しちゃいます。こんなことって普通できないんじゃないかな。
    なかにはそれを曲解して、マスコミは息子をマフティにしたてあげたのはブライトの影響?なんてわけのわからない論調を展開している
    新聞紙もありました。あきれてなにもいえません。こんなことかくひとは皆粛清されちゃえばいいのに。なんておもったり。


    ねぇ、ハサウェイ。わたしはおもうんです。貴方は死んじゃったんだけど、きっとまだ私の中で生きてるんです。

     私は貴方のことを忘れません。たとえ、この世界にいる誰もがマフティー・ナビーユ・エリンのことしか覚えてないとしても、
    私とケネスだけはずっと死ぬまで、ハサウェイ・ノアのことは忘れません。あたしとケネスはあなたのことがホントに好きだったんです。
    それがいいたかったんです。だから、こうして便箋をかってきて一気にここまで書きあげました。明日の朝一番で郵便局にいって
    切手をはって投函するつもりです。けれど、住所がわからないから(ブライトさんの住所どこにも載ってません)、なんにも宛名は書きません。
    きっと、「差出人、送り人不明」って書かれて郵便局の片隅でうもれちゃうでしょう。残念です。
    けど、住所がわかってもきっと住所欄は空白でだすとおもうな。こんな手紙がとどいたらブライトさんもこまっちゃうだろうから。


    どこか遠くで犬が鳴いてます。キューシューにはいまだに犬を飼っている家庭が多いんです。
    あたしも今度飼おうと思います。そうすれば少しはこの胸にぽっかりとあいた空白感もなくなるかもしれないって期待してます。



    さよなら。ハサウェイ。またなにか書きたいことがでてきたら送ります。ケネスも今度は書きたがるかもしれません。
    今回はどうしてもあたし一人で書いてみたかったんです。月夜の晩にこうして一人で貴方のためにかきたかったんです。
    月は本当に綺麗です。きっと、あそこにはいっぱい不条理がつまってるんだとおもいます。
    それじゃあおやすみなさい。
       

     
                宇宙世紀 105年 8月1日  
     
                             ギギ・アンダルシアよりハサウェイ・ノアへ。  ニホンにて。

    169 通常の名無しさんの3倍 :04/07/24(土) 23:37 ID:???
    胸いっぱいで何も言えないけど……
    感動しました。ほんとにこの作品が読めてよかった。
    ハルキスト兼ガノタでほんとよかった。


    お疲れ様でした&ありがとうございました。

    170 通常の名無しさんの3倍 :04/07/25(日) 00:27 ID:???
    ブライトさんの絶望を思うと辛くて「閃光のハサウェイ」は
    ずっと封印していたけど、今なら読み返せそうな気がするよ。
    ありがとう。

    172 通常の名無しさんの3倍[sage笠原ギギ萌えー] :04/07/25(日) 16:11 ID:???
    感想は色々あるけど・・・

    よかったね、ブライトといいたい。












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    くぎゅうーっ!!く、くーっ!!クギュアーッ!!!ギュアーッ!!!!!
    CV:釘宮理恵 CV:後藤邑子 CV:宍戸留美 CV:小清水亜美
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    1001  学名ナナシ  :2006年12月07日 03:13  ID:nbo2dEV70
    ねじまき鳥クロニクルって妻が出てって、学校に言ってない女と
    知り合って、カツラの話して戦争言ってたお爺さんと話して
    井戸に潜って妻の兄を殺すって話だっけか?
    さわりだけ読んだらTVピープル?
    羊男はねじまき鳥だったっけ?
    もうどれがどれやら・・・
    1002  学名ナナシ  :2006年12月07日 05:52  ID:gWOVXZ.30
    加納マルタとクレタのことも忘れないであげて下さい。

    羊男は羊をめぐる冒険とかダンス・ダンス・ダンスとか図書館忌憚とか。
    1003  学名ナナシ  :2006年12月07日 07:26  ID:pbQCJ0z50
    最近やたら村上春樹ネタ多くないか?管理人好きなのか。
    1004  学名ナナシ  :2006年12月07日 13:02  ID:llPL7CkQ0
    こいつぁ すごい長文だー
    1005  学名ナナシ  :2006年12月07日 14:25  ID:mfxZfZbC0
    ウゼェよ
    1006  学名ナナシ  :2006年12月07日 19:06  ID:tUgkZiLL0
    あまりに長すぎてまったく読む気が起こらなかった。
    つかスクロールするのめんどいからひとつにまとめてちっちゃくしてくれ。
    1007  学名ナナシ  :2006年12月07日 21:12  ID:xLsvyUCR0
    村上春樹を知らないが
    おもしろかったよ
    1008  学名ナナシ  :2006年12月07日 22:54  ID:w48ibmWL0
    村上春樹も小説版ハサウェイも読んだことないけど面白かったわ
    1009  学名ナナシ  :2006年12月08日 03:45  ID:wPgz2a.L0
    どうしてねらーはこうも長文が嫌いだろうかってたまに考える
    1010  学名ナナシ  :2006年12月09日 19:18  ID:hodoNouj0
    俺は米1009の言う様な「長文の嫌いなねらー」なのだが、これは時を忘れて読んでしまった。
    1011  学名ナナシ  :2006年12月13日 05:17  ID:.Ewdazqy0
    やべぇ、明日テストなのに……
    ああ、もう今日か。一気に読んでしまった。
    1012  学名ナナシ  :2006年12月13日 05:31  ID:s.c68Ppk0
    悪くない気分になれた
    1013  学名ナナシ  :2007年11月09日 20:37  ID:mr6sY0Sp0
    つい最近になってガンダムファンになりました。
    ブライトがとても好きなので、
    この文章を見つけてとても嬉しく思いました。

    村上春樹の作品は「海辺のカフカ」を読んだだけでしたが
    ここで引用されている作品も読んでみようと思います。

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